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名古屋高等裁判所 昭和53年(ラ)37号 決定 1978年5月11日

抗告人 株式会社丸三三谷商店

右代表者代表取締役 三谷昭三

抗告人 三谷興業株式会社

右代表者代表取締役 三谷昭三

右両名代理人弁護士 東浦菊夫

古田友三

主文

原決定を取消す。

理由

抗告代理人は、「原決定を取消す。本件競落を許さない。」との裁判を求め、その理由として「一、本件競落は不正に行なわれた。即ち、(1)競落人は抗告人らに対し、昭和五三年二月二三日本件競売に参加しない旨約したにかかわらずこれに反して競売に参加し競落した。(2)本件競売価額は、競売不動産の時価(約一億一千万円)に比し不当に低廉である。二、本件債務に関し、抗告人らは債権者株式会社中央相互銀行を相手方とし名古屋簡易裁判所に調停の申立(同裁判所昭和五三年(ノ)第七五九号)をするとともに、本件競売手続停止の申立をし、抗告人三谷興業株式会社は同年四月五日に、抗告人株式会社丸三三谷商店は同月一〇日に、それぞれその旨の停止決定(同裁判所昭和五三(サ)第三一五号)を得たので右決定正本を提出した。よって本件競落許可決定は取消さるべきである。」旨申述した。

(当裁判所の判断)

一、抗告理由一・(1)について

右が競落許可決定に対する抗告理由たりえないものであることは民訴法六八一条、六七二条に照らし明らかである。

二、同一・(2)について

記録によれば、鑑定人(不動産鑑定士)により、昭和五一年一一月当時における本件競売不動産の総評価額が一億〇八〇九万九〇〇〇円と鑑定評価されたこと、原裁判所において、これを最低競売価額として競売を実施したが入札の申出をなす者がなかったため、順次最低競売価額を低減したうえ数回にわたり期日が開かれ、昭和五三年二月二〇日の期日においてようやく丸英自動車中古車販売株式会社から本件不動産を一括して最高価金五、七四八万円(最低競売価額は五、七四六万円)の入札申出がなされたことが認められる。したがって右の経過からすれば価額の点に関し、本件競売を違法ならしめる瑕疵が存しないことは明らかである。

三、同二について

記録によれば、所論にいうとおりの経緯をもって名古屋簡易裁判所において本件競売手続停止の決定がなされ、昭和五三年四月一一日右決定正本が当裁判所に提出されたことが認められる。

かように競落許可決定言渡後、これに対し即時抗告が申立てられ、民訴法五五〇条二号の裁判の正本が提出された場合は(抗告裁判所としては、右の新たな事情を斟酌して裁判すべきものであるから)、競売法三二条二項、民訴法六八一条二項、六七二条一号、五五一条により、原決定を取消して、前記調停事件が終了するまで前記競売(入札)期日の手続が終了した状態で競売手続を停止しておくのが相当であると解される。

四、よって、原決定はこれを取消すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 村上悦雄 裁判官 上野精 春日民雄)

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